自己は自分の一番の味方

米国のリンカーン大統領が劇院で観劇した夜に暗殺されたというのは周知のことだと思います。実は大統領が暗殺された夜に自分のポケットに入れた所持物が後年公開されました。ごく普通の物(例えば、観劇様の望遠鏡やハンカチなど)以外に、ちょっと変わった物があります。

それは、8枚の新聞記事の切り抜きです。記事は、彼と彼の政策を褒め称える内容だったそうです。どうしてリンカーンはそんな記事を切り抜いた上、肌身を離さずに持ち歩いたのでしょうか。私に考えるのは、一国の大統領であっても自分は適格だ、自分の政策が正しいのだ、という証拠を集めて、自己肯定を求めていたのではないかと推測します。米国で最も尊敬されている大統領と言ってもいいほどのリンカーンでも、このように工夫して、自分を自分の味方にして、自信を貫こうとしているのに、私たちは偶にでも、自分で自信を崩すような考え方や言動をとっていませんか。自分の味方でないような考えは、一切無くすように気をつけたいですね。

実は今世界で一番大きいヘッジファンドであるBridgwater Associates の創立者であるRay Dalioは、愛読書のリストに、Einstein's Mistakes: The Human Failings of Genius というちょっと変わった本を入れてあります。アインシュタインが犯した間違いを列挙した内容の本でした。Dalioは、天才アインシュタインでも実はかなり間違いをしていたんだという事実を持って、しばしば間違いをしてしまう自分を励ましているのです。

他人からの自分を肯定するメッセージを常に持ち歩くなり、ものすごく頭のいい人でも過ちをするんだという事実を念頭に入れるなり、自分にとって有効な手段を使って、自分は充分だ、自分は絶対にできるんだと、自分に言い聞かせて、自分は自分の一番強い味方でいましょう。

知恵東西

ニューヨーク在住。中国 (C)、アメリカ(A)、日本(N)で学んだこと、考えたことを思うがままに綴る。

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