ただ起きぬ(3)

音楽家なのに耳が聞こえなくなってしまった。画家なのに目がはっきり見えなくなってしまった。食品関係の起業家なのに、味覚が鈍くなってしまった。あなただったら、どうしましょうか。


ベートーヴェンの最も有名な作品のほとんどが、彼は耳が聞こえなくなってから創作した。耳が聞こえなくなったベートーヴェンは、むしろ世間の雑音や騒音から守られ、静まり返った世界に自分の心に流れる音楽だけに耽ることができるようになったのではないか、と説明した評論家もいます。


モネは目がはっきり見えなくってから、印象派の作品を大量に描いて、印象派の草分け的な存在でかつその派を代表するような巨匠となりました。物の形がボヤとしか見えないモネだからこそ、印象に残る光と色彩の演出をより鋭く察知できたのではないでしょうか。


似たように、最近聞いたインタビューによると、アメリカで大変人気のあるなBen & Jerry’sというアイスクリームメーカの創業者の中の試食担当の方が、実はある病気により、嗅覚と味覚がとても鈍かったことがあり、だからこそ、彼らたちは、味覚 (taste) だけに配慮した従来のアイスクリームと違った、口の中での感覚や舌触りの食感 (texture)も重視した新商品を開発できたそうだ。今は、クリームの中にチョコなどの塊が混じっているという質感が、Ben & Jerry’s 社の商品の特徴になっています。


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致命的な弱点。。。のように見える特徴を逆手にとって、自分に有利に働かせる。それができる人間は、画期的な成功を収めるまでには、もう遠くないでしょう。

知恵東西

ニューヨーク在住。中国 (C)、アメリカ(A)、日本(N)で学んだこと、考えたことを思うがままに綴る。

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