フランクリンのルーティン

この前、ペンシパニア州のフィラデルフィアに訪れた際に、その市内にあるフランクリン科学博物館に足を運んだ。アメリカ建国の父の一人であるベンジャミン・フランクリンは、科学界でもたくさん優れた功績を残していることに驚いた。それだけではなく、彼は、印刷業で経済的な成功を収め、数カ国語に精通した外交官でもあった。

しかも、大学に行ったことのない彼は、こういった多岐に渡った才能をすべて独学で習得したと判明しました。

尊敬の念と好奇心に駆られ、私はフランクリンの自伝を読むことにしました。「ベンジャミン・フランクリン」という本を読み終え、最も印象に残ったのは、彼が毎日に行う二つのルーティンです。一つは、朝と夕2回ほど自分の一日の行いを自省すること。もう一つは、自分の行動を13の徳目に照らして記録することです。

ルーティン1:高い意識を定める

フランクリンは、毎朝、机に向かい、今日はどんな良い行いをしたいのか(”What good I plan to do today?”) と自問します。夕方になって、自分の一日を振り返り、今日はどんな良い行いをしたのか (“What good I have done today?”)と、再び自分に問います。

これは、仕事などでの具体的なto-do listではなく、高いレベルでの魂の浄化というか、善行意識を養う習慣だと思います。このようなルーティンを持つならば、誰だって、普通の人よりは一段も二段も優れた人格を持つようになるのでしょう。

ルーティン2:徳のリストに照準する

フランクリンは、以下に列挙した13種目の徳(13 virtues)は、立派な人格を養うため最も大切だと考え、20歳から自分の日々の言動を点検する「家計簿」をつけるようになりました。

1. 適量(過度な飲食をしない)(英文原文:Temperance - eat not to dullness, drink not to elevation))

2. 沈黙(他人や自分にとって有益な話しか話さない。価値のない会話を回避する。)(Silence - speak not, but what may benefit others or yourself. Avoid trifling conversation.)

3. 順番(ものは決まったところに置き、作業は決まった時間に行う)(Order - each thing has its own place; each business has its own time.)

4. 決心(やるべきことをやる決心を、決心したことを必ずやる)(Resolution - resolve to perform what you ought; perform without fail what you resolve)

5. 節約(他人や自分にとって有益な出費しかしない。即ち、浪費しないこと)(Frugality - make no expense but to do good to others or yourself; i.e., waste nothing.

6. 勤勉(時間を無駄遣いしない)(Industry - Lose no time; be always employed in something useful; cut off all unnecessary actions.)

7. 真摯(人を騙さない。無邪気にかつ公正に考える。話す時も、そのように話す) (Sincerity - use no hurtful deceit; think innocently and justly, and, if you speak, speak accordingly.

8. 正義(他人の利益に傷つけたり、他人に利益を与えるべきことを怠ったりすることによって他人に損害を及ぼすようなことをしない)(Justice -wrong none by doing injuries, or omitting the benefits that are your duty.)

9. 中庸(極端なことをせず、激怒をしない)(Moderation - avoid extremes; forbear resenting injuries so much as you think they deserve.)

10. 清潔(体も服も住居も不潔は許さない)(Cleanliness - tolerate no uncleanliness in body, clothes, or habitation.)

11. 穏やか(細やかなことやよく起る出来事などで穏やかさを失わない)(Tranquility - be not disturbed at trifles, or at accidents common or unavoidable.)

12. 貞操(chastity - Rarely use venery but for health or offspring, never to dullness, weakness, or the injury of your own or another's peace or reputation.)

13. 謙譲(イエスおよびソクラテスに見習う)(humility - imitate Jesus and Socrates.)


フランクリンは、専用な手帳を作って、毎日の終わりに、この13徳に照らして、自分の言動を点検する。違反のある徳の後ろに、黒い点をつける。多く違反のある場合は、その分多くの黒い点をつける。

また、毎週に一つの徳に特に注意を払って特訓するため、手帳の一番上にその徳目だけ大文字で掲げる。その種目の後ろに、黒い点がなくなるまで、特訓する。彼の計画では、13種目は13週で終わらせて、一年に4回ほどこの作業を繰り返せることになるはずでした。しかし、数週間もかけてやっと黒い点を無くせた種目もあったため、結局この13種目は一年に一度しか完成しなかったそうです。(彼の手帳の一ページをここでご覧になれます。http://www.thirteenvirtues.com/)

このような訓練は、彼の人生で何度も繰り返して行われました。自伝の中、彼は、この習慣をつけることによって、彼は完璧な人格を養えたかと言われると、全く養えなかったが、しかし、この習慣のおかげで彼はより良い人間になれたし、より幸せな人間にもなれた(“better and happier”) と評しました。


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偉大な人物は、それなりの天分にも恵まれているのだろうが、このように、自分で自分を導き、自分を育てるような日々の工夫も絶対不可欠だと思います。フランクリンのこの二つのルーティンから、自分の人格の養成及び他のスキルを高めるために、素晴らしいヒントを得られたように思います。

知恵東西

ニューヨーク在住。中国 (C)、アメリカ(A)、日本(N)で学んだこと、考えたことを思うがままに綴る。

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