変化の中にも不変がありーー『サザエさん』」と「男はつらいよ」
海外にいながら日本が懐かしい時は、大体インタネットで『サザエさん』を見てしまいます。『男はつらいよ』も見たいですが、第1作以外にあまりアップロードされていないようなので、やや残念に思います。
『サザエさん』は何十年経っても同じだというイメージがあったが、ネットで見ていると、だいぶ昔の「サザエさん』と最新の「サザエさん』をほぼ同時に見られるので、実は、『サザエさん』も時代とともにかなり変化を遂げているなとはっきり気づかされました。
まずは、昔はカツオがいたずらをすると、すぐにお父さんかサザエさんに叩かれます。頭にいつもこぶができています。押入れに閉じ込められたりもありました。さすがに今は怒鳴られるだけで済むようになって、体罰や暴力は画面から一切消えました。
また、昔だと、磯野家のお父さんは自分のお茶でさえ入れることができないため、お母さんはお父さんを一人で家に留守させることは滅多にありませんでした。隣の伊佐坂先生のお宅も同じで、ある日伊佐坂先生は家で仕事をしている時に、おかるさんが外出しなければいけない事情があり、お母さんが伊佐坂家に行っておかるさんの代わりに先生にコーヒーを淹れてあげました。それに対して、今はお父さんもマスオさんも時々家事や料理に挑戦するようになりました。(料理はほとんど失敗して、結局店屋物をとる落ちになりますが・・・)
そのほか、昔はお父さんもマスオさんもタバコを吸っていたが、今は全然吸っていないようになっています。昔は家に泥棒に入られたり、火事が多くてサザエさんは野次馬に走ったりするエピソードも多かったが、今は滅多にないようです。
しかし、どの時代の『サザエさん』にも、サザエさんは陽気でおっちょこちょい、カツオは腕白で変なところに気がきく、お父さんは一家の長としての存在感はしっかりしている中で酒癖が悪いなど変わらないものがあります。何よりも、磯野家の家族間の思いやりやちゃぶ台を囲んで笑いを飛ばしながらのご飯シーンは、いつ経っても、人々の心を優しくしてくれます。
似たように、『男はつらいよ』も第1作にタバコを吸ったり、暴力的なシーンがあったり、泥棒が出たりして、後期の作品にはあまり見かけないシーンがあったという変化があります。しかし、その映画にいつも漂っている下町の暖かさ、義理人情の厚さ、寅さんの飾らない性格、縛られない生き様、妹への愛情など、いつの時代にもどこの地域にも通じる普遍的で不変な人々の心を掴む人間味があります。
山田洋次監督は、『男はつらいよ』は、いつも変わらないことがその映画の魅力だとおしゃったことがあると覚えていますが、それはその通りだと思います。時代に合致した変化もありながら、その根底にあるコアの何が不変であることが、長く続く国民的な作品の魅力なのでしょう。
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